なぜ「愛されない政治家」フランク・アンダーウッドが人々を魅了するのか?
ハリウッド業界と米国社会に風穴を開けた、名女優ロビン・ライトの意地。
通常のテレビドラマには無い、『ハウス・オブ・カード』の面白さとは?
現実に大統領選挙戦の真っ直中である2016年。米国の政界のトップの座を狙うのは、共和党候補のドナルド・トランプと民主党候補のヒラリー・クリントン。
人種差別を増幅させるような極端な暴言の数々や政策方針で、いまや"移民国家アメリカ"の幅広い層から毛嫌いされているトランプ。一方、前国務長官時代に公務で私用メールを使っていた問題がくすぶり続け、危機管理責任の感覚を今も国民の6割近くから疑問視されているクリントン。
特に民主党は、社会的弱者や若者たちに配慮した手厚い政策を掲げて熱い支持を受けていたバーニー・サンダースが、この夏の党大会直前まで、党の代表候補の指名争いでクリントンに対しギリギリまで攻防を繰り広げたため、世間の人気を完全に二分していた。
今、アメリカの国民は「希望を抱ける大本命の候補者」がいないまま、11月の大統領本選を迎えようとしている混沌状態にあり、かつてオバマ大統領を生み出した時ほどの興奮の空気にはまだ達していない。
皮肉にも、『ハウス・オブ・カード 野望の階段』の主人公フランク・アンダーウッド(ケヴィン・スペイシー)は「特別に愛されてはいない政治家」という点で、トランプやクリントン両者とやや共通している。フランクは、国民から直接選ばれた大統領ではない。復讐心と陰謀の限りを尽くして、前職の大統領ギャレット・ウォーカーを失脚に追い込み、その代理としてトップの椅子に座った男だ。支持率が決して高くないまま、シーズン3&4ではついに初めて挑む大統領予備選と本選に突入していく。
ではなぜそんなフランクが、視聴者からの共感を得て、この政治ドラマを稀有な人気シリーズに押し上げたのか?彼の政策の軸は、国民のための大胆な雇用拡大にある。「アメリカ・ワークス」という、米国各州に新たな雇用の機会を生むための政策を、議会の議員たちの妨害にあっても、たとえ違法すれすれのやり方であっても、実現に向けて全力で押し進めてきたのだ。
シーズン1で、前職の大統領陣営にあっけなく裏切られたフランクは、党をまとめ得る実力を持ちながらも、恵まれた境遇のスタートを切ることができなかった。彼の政界でのキャリアは、挫折そして冷や汗をかくような危機の連続だ…。しかし、失意が訪れる度に、その闇に沈むことなく熟慮し、時には圧巻のスピードと機転による「決断」によって、ピンチの数々を次から次へと乗り越える。
その姿が頼もしく、小気味よいのだ。取り返しのつかない犯罪まで実際に犯し、背水の陣にいるフランクだが、そのポジティヴで強い精神と実行力に、視聴者たちはいつのまにか「比類の無い資質」を見出しているといってもいいだろう。
揺るぎない「決断」と、留まらない「行動」。
これこそが、フランク・アンダーウッドを"次期大統領"に!とつい思わせる、人気の秘密だろう。
彼の不断の姿勢を見つめていると、彼が罪人であることをつい忘れて、勇気をもらうことさえあるのだ。
これまで「政治劇」というジャンルは、女性にはあまり人気がなかったかもしれない。しかし『ハウス・オブ・カード 野望の階段』は、ハリウッドという社会の壁をも突き崩す役割を果たし、世の女性たちの称賛を浴びている。大統領夫人クレア・アンダーウッドを好演し、これまで全52エピソードに出演しているロビン・ライト。製作指揮の一人としても名を連ね、シーズン3&4では、実に6度にわたり監督も務めている。
ロビンは、番組のデータではクレア役の人気がケヴィン・スペイシーを超えていた時期さえあることや、自分の同ドラマシリーズへの貢献度の大きさを製作サイドに訴え、ケヴィンと同額となる内容の昇給を要求したという。彼女がフィクションの中だけでなく、現実の社会でも男女格差を覆したニュースは、多くの国民に勇気を与えている。
このドラマでは、冷酷で強引な権力者に決して屈しない女性たちのパワーと意志の強さが何度となく描かれ、クレア・アンダーウッド役はその象徴とも言える。シーズン2からは、米国の宣伝ポスターに写っているのは、必ずケヴィン・スペイシーとロビン・ライト両名だ。
特にシーズン4では、大統領フランクが人生最大の危機に陥り、ずっと政治上の経験不足を指摘されてきたクレアが、夫以上の才覚と図太さを見せつける場面が訪れる。それらのエピソードをロビンが監督としてメガホンをとり、確かな手腕で描き切っているのだ。
クレアが某国に乗り込み、一筋縄ではいかない政界リーダーとしのぎを削る激突は、爽快でさえある。
そしてついに彼女が政界の表舞台の脚光を浴びる姿を描いた章をロビン自身が手がけた演出は、シーズン中でも屈指の忘れ得ぬ感動エピソードとなっているので、女性ファンにも男性ファンにも是非観て欲しい。
今、もし現実の世界で、クレア・アンダーウッドが大統領選に立候補したとしたら、支持者の票は、ヒラリー・クリントンよりもクレアに多く集まるかもしれない。それほどの値の存在感を彼女はドラマの中で見せている。
日本でも急速に普及しているNETFLIXというストリーミング配信で、ひとつのシーズンの全エピソードを一気に公開する画期的な手法は、ドラマシリーズの在り方を変えてしまった。
どんな出演者の、どの監督の、どんな作品が好んで観られるかを常にネット上の過去の視聴データから判断できる立場にある製作陣は、「これはヒットする!」と確信の持てる企画に潤沢な製作費を注ぐことができた。『ハウス・オブ・カード』は、シーズン1&2の同時製作にゴーサインが出た異例の作品だが、両シーズンで計100億円以上の予算が費やされたという。最新のシーズンには、さらに高額の予算がかけられているようだが、膨大な数の視聴契約客たちの料金でまかなえるので、広告費に頼る必要が無い。
シーズン途中で打ち切りになることもなく、尻切れとんぼのような脚本にも絶対にならないということだ。
視聴者の満足度が高くなるのも頷ける。
広告費に頼らないということは、CMによる中断が一切無い。これはクリエーターや撮影スタッフとキャストたちにも有益だ。通常のテレビドラマはCMが入るタイミングに合わせてストーリーの盛り上がりを仕掛けるような脚本作りを強いられる。当然、その中断で一旦は流れを止める編集をせざるを得なくなる。
そういう不自然な編集が『ハウス・オブ・カード』には無い。そして、全エピソードを一気に配信することから、視聴者を"次週"まで引き止めるための派手なサプライズ工作も要らない。なので、映画のような趣のエンディングで締めることも可能になる。毎回工夫された、何かが脈打つような終わりの余韻は、心地よいほどでクセになる。
『ハウス・オブ・カード 野望の階段』には、各エピソードにタイトルが無い。「第1章、第2章…」と数字が刻まれているだけだ。1話1話では終わらない長編の小説を人々が読みたい時にページを開くように観られる、そういうドラマ創りにクリエーターのこだわりが表れている。
シーズン1から、製作総指揮の一人である名匠デヴィッド・フィンチャー作品に見られる深遠さ、冷たさ、怖さ、静けさ、スリル、成熟したリズム、そして美しさ…といった作品の重要要素が失われないまま貫かれているのも、この製作体制の賜物なのだろう。
アメリカを率いるリーダーを決める選挙は、いわゆる"密室政治"ではない。予備選挙で党の代表を決め、本選に至るまで、候補者たちの政策と信念は公開ディベートの場で討論される。言葉を入念に吟味し、カメラ映りの良い佇まいを研究し尽くし、政敵とぶつかり合う。劇場型ともいえる政治の戦いのシステムそのものがエンターテインメントにもなる。
今年オバマ大統領が広島を訪問した際の公式のスピーチを覚えているだろうか。哀悼の意と、平和への祈念を織り交ぜ、各方面に配慮しながら丁寧に語られたメッセージは多くの人々の心を掴んだ。
言葉によるコミュニケーションは、政治家たちの生命線である。熾烈な選挙戦中の討論・講演・取材を通じ、専属のスピーチライターが練りに練って紡いだ言葉は伝播し、支持者を熱狂させ、感動させる。もちろんドラマの中でもそういうスピーチを入念に綴る戦略的シーンはしっかりと描かれている。
アメリカの市民は、一般的に政治に寄せる関心度が高い。すべての討論やスピーチを映し出す番組に、人々は注目する。大統領選挙の年は特にそうである。
米国の街を車で走っていると、選挙で自分が支持する候補者の名前の入ったステッカーを貼っている車を度々目にする。支持候補の名前のバナー(応援ポスター)を庭に立てかけてある家もあったりする。
それだけ、政治と市民の間柄が切実で密接なのだということが肌でわかる。国民の利益にそぐわないような政策や行動はすぐにやり玉に上げられる。暴言や失言、失政も、直ちに人気コメディやトークショー番組で笑い者にされる。こういう部分は実に羨ましい。
そしてさらに見習いたいのは、『ハウス・オブ・カード 野望の階段』のような皮肉や風刺に満ちた、しかし骨太で見応えのある政治ドラマが、4シーズン(5シーズン目も製作中)も質を落とすことなく継続していることだ。
数年前、このドラマが初めて業界の話題になった頃は、主人公が大統領の座につく時がピークで物語は終わるのだと思っていた。そういう"ミニシリーズ"の企画なのだろうと。ところが面白さは増し、人気はさらに上昇した。
スタート当初の政敵はフランクと同じ民主党内にいただけだが、大統領ともなれば共和党の議員とも対峙し、国外の要人や支配者や政治システムとも争わなければならない立場になる。特に米国は、世界の番人的リーダーを自負していることから、中東の和平工作、ロシアや中国と牽制し合う外交、イスラム系組織のテロの脅威など、現実の世界情勢で起こるあらゆる問題がドラマ内でも当然起こる。さらには、全米ライフル協会の圧力で行き詰まる銃規制の問題、現職大統領フランクの覆い隠された「闇」を暴こうとするジャーナリズムの執念など、よくもこれだけの懸案をさばききれるものだと思う。俳優にも、脚本家にも、各エピソードの監督たちの力量と器には脱帽するばかりだ。
しかもシーズン3&4では、現実の米国大統領選挙戦とほぼリアルタイムの進行で、架空のドラマではあるにしてもホワイトハウスの舞台裏の攻防を目撃でき、スリルを疑似体験できる。こんなに興味深い政治テキストがあるだろうか?僕はこのドラマを観たことで、自分が今住んでいる社会の政治により好奇心を抱き始めた。と同時に、そこから影響を受ける日本の政治の仕組みにも思いを馳せるようになった。
混沌とした今年の現実のアメリカ大統領本選。支持率ではクリントンが一歩リードしているが、トランプの嵐のような勢いは侮れず、今の段階ではまだ行方は読めない。ひょっとしたら、思いもよらないようなことが、『ハウス・オブ・カード 野望の階段』の中で、そして現実の選挙で、起こるかもしれない。
主演のケヴィン・スペイシーは語る。「驚くのは、ストーリーを決めて、脚本が書かれて、撮影されて、まもなく配信されるっていう時に、まさに脚本に描かれていた内容に近い出来事が、毎シーズン後に起きていることなんだ!新聞のヘッドラインや記事を追いかけて作っているんだろう、と思われているが、その逆さ。我々がドラマで描いたことを、"現実"のほうが真似ているんじゃないかな…」
シーズン1から4までをずっと牽引し続けたこのシリーズの立役者でありトップクリエーターであるボー・ウィリモンは、報道のインタビューで応えている。「もし数週間、数ヶ月前に考慮していたら、バカげてる!そんなことが起きるわけない!と思えたことでも、現実の人生では起こるんだ」と。
「"現実"が、一番の競争相手なんですね?」とインタビュアーが問うと、ウィリモンは笑顔で即答した。「その通りさ!!」
今、最も米国社会とハリウッドの業界で注目される本シリーズは、撮影も、照明も、セット美術も、衣装も、編集も、音楽も、非の打ち所がないほど洗練されている。幾重にも仕組まれる伏線を回収しながら、新たな難題を次々と投げてくる展開と、落ち着いた響きなのにグサリと心をえぐるようなセリフを繰り出す巧みな脚本も素晴らしい。
そしてそれらに息を吹き込み、冷徹な真顔で、冷め切った目で政敵の息の根を止め、一方では庶民を安心させる優しい笑顔と味方や敵を欺く言葉を振りまき、政治家の清濁の両性を演じ切るキャストたちは見事だ。
このドラマを観るのに、小難しい政治の知識は要らない。
一庶民、一視聴者に、鮮烈に伝わってくる「感情」と「力」のダイナミズムが最高のご馳走になってくれるからだ。
これまで政治劇を食わず嫌いだったあなたも、世界を揺るがし得る"危険と恐怖"を孕んだリーダーを「人々が選び出す」熱狂に、今、この絶好機にこそハマってみてはいかがだろうか。
【筆者プロフィール】
俳優 尾崎英二郎
NHK朝の連続テレビ小説「あぐり」でテレビデビュー。
NYオフ・ブロードウェイでの舞台公演『ザ・ウインズ・オブ・ゴッド』の演技で現地メディアの評価を得たことを契機に、日本から米国業界に挑み、トム・クルーズ主演の映画『ラストサムライ』、主要キャストに抜擢されたクリント・イーストウッド監督作『硫黄島からの手紙』に出演後の2007年に活動拠点をハリウッドの地に移す。
主な出演作に『HEROES/ヒーローズ』、マーベル『エージェント・オブ・シールド』、スピルバーグ製作総指揮のSFドラマ『エクスタント』等。
最新作は、戦時中のアメリカの父子の絆を描いたファミリー映画『リトル・ボーイ 小さなボクと戦争』(8月27日より日本全国で公開)。
ハリウッドの映画・テレビ界に参入した道のりと戦略を綴った『思いを現実にする力』著者。
民主党の指名獲得を確実にしたヒラリー・クリントンの副大統領候補が話題となるなど、11月の一般投票に向けてさらに注目を集めている大統領選挙。そんな中、将来の大統領候補として支持される人気俳優ケヴィン・スペイシーが、選挙に出馬する意思はないと明かしたことが分かった。
映画界最高の栄誉であるアカデミー賞を2度受賞したほか、演劇界での功績により英国から名誉ナイトを授与されるなど、国内外で名優としての地位を確立しているケヴィン。そんな彼が大統領に望まれる主な理由は、人気の政治ドラマ『ハウス・オブ・カード 野望の階段』。同作で彼は、数々の陰謀を巡らせて下院議員から最終的に大統領へと上りつめるフランク・アンダーウッドを演じている。
英Guardian紙主催でファンからの質問に答えていたケヴィンは、「大統領選挙出馬を考えたことは?」と聞かれた際、「私は物事をきちんとやり遂げたいタイプなんだ。だから、政治家になったらすごくストレスが溜まって、フランクみたいにいろんな人を殺すようになってしまうだろうね」と、ジョークを交えながら出馬する意思はないことを明かした。
フランク・アンダーウッドは、今年4月にある航空会社が行ったアンケート「次期アメリカ大統領にふさわしい資質の持ち主は?」で、クリントンに次いで2位に入ったこともあるキャラクターだ(ちなみにドナルド・トランプは同4位)。ただし、このフランクという男は決して清廉潔白なわけでなく、人を裏切ったり手を汚すことも多い。それでも多くの支持を集めている理由について、ケヴィンは番組の手法が大きいと分析している。「フランクがドラマの中で視聴者に語りかけるのは見事なアイデアだと思う。これによって、見ている人とフランクの間に一種の共犯関係ができるからね。だから視聴者は彼のことを恐れながらも、つい擁護してしまうんだ」
第40代大統領となったロナルド・レーガンをはじめ、カリフォルニア州知事を務めたアーノルド・シュワルツェネッガー、カーメル市市長に当選したクリント・イーストウッドなど、政治の世界へ足を踏み入れた俳優も少なくない。ケヴィン本人も、5月に司会を務めたパーティーの余興でドナルド・トランプやビル・クリントンの物真似をするなど、政治への関心はあるようだが、今のところそうした野心がないのは残念だ。しかし、『ハウス・オブ・カード』でこれからも政治的な手腕を発揮し、ファンを大いに楽しませてくれることだろう。
(協力:ナノ・アソシエーション)
ヒラリークラスの政治家にドラマを見る時間があるなんて、信じられないような気もするが、実はバラク・オバマ大統領も『ハウス・オブ・カード 野望の階段』の大ファンなのは有名な話。
第2シーズンのリリース前日には、「明日は“ハウス・オブ・カード”の日。ネタバレ(ツイート)はしないで」と、待ちきれない様子をツイートしている。
任期満了が近づいている今年は、特にリラックスしてドラマと現実両方の大統領選を眺めているに違いない。
また安倍首相が訪米時、ホワイトハウスで開かれたオバマ大統領主催の公式晩餐会で、「私はこのドラマを(麻生太郎)副総理には見せないようにしようと思っている」と話し、会場を沸かせたことも話題に。そしてなんと、中国の習近平国家主席も、訪米中の演説で、「中国の反腐敗闘争は権力闘争ではない。米テレビドラマ『ハウス・オブ・カード』(の世界)も存在しない」と発言し、笑いを誘うなど、各国のトップが話題にしている。
(協力:学習院女子大学 藤原朝子)
その圧倒的なリアリティーは、CNN が「『ハウス・オブ・カード 野望の階段』のどこまでがフィクションで、どこからが現実か」という特集を大真面目に組むほど。 それは個別の出来事だけでなく、法案を通すためのドロドロした駆け引きから、米国家安全保障局(NSA)の情報収集プロセスまで、いわば政治の裏側が克明に描かれているからだ。
国際政治の専門家でさえ「ああ、こういうことだったのか!」と、アメリカ政治の解説を見ている気がしてくるらしい。 その印象はあながち的外れではないようだ。ビル・クリントン元大統領は、「『ハウス・オブ・カード 野望の階段』の描写は 99%正確だ」とお墨付きを与えている。 ちなみに実際のアメリカ大統領選挙にて先日、民主指名争いで勝利宣言をした妻のヒラリーもこのドラマのファンで「ビルと 2 人で(13 話を)イッキ見した」と公言している。
(協力:学習院女子大学 藤原朝子)
次期アメリカ大統領にふさわしい資質の持ち主は誰だと思いますか―。ある航空会社がそんなアンケートを実施したのは4月末のこと。結果は、1位がヒラリー・クリントン、2位はフランク・アンダーウッド、3位はバーニー・サンダース、そして4位がドナルド・トランプ。ふむふむ、妥当な結果だな。でも、アンダーウッドって誰?そんな候補者いたっけ?実は、フランク・アンダーウッドは、アメリカの大人気ドラマ『ハウス・オブ・カード 野望の階段』の主人公。強烈な権力欲 を持つベテラン下院議員で、ある屈辱的な経験をきっかけに、陰謀をめぐらせて民主党の院内幹事から副大統領、さらには大統領へとのし上がる。そのフランクが、第4シーズンでは2016年大統領選に挑む。
2013年の放送開始以来、『ハウス・オブ・カード 野望の階段』はスリルあふれる展開と、豪華な製作陣(監督はデヴィッド・フィンチャー、主演はケヴィン・スペイシー)、そして1シーズン13話を一挙公開するという画期的なフォーマットで大きな話題を呼んできた。
だが、このドラマの最大の魅力は、アメリカの政界を怖いくらいリアルに描いていることだろう。なにしろドラマで起きる出来事が、恐ろしく現実とシンクロしている。第4シーズンでも、サウスカロライナ州の南軍旗問題から、ロシアと中国が絡むエネルギー危機、シリアおけるイスラム過激派の台頭など、現実の世界と交錯する事件が次々と発生する。アメリカ政治を少しでも知る視聴者には、思わずニヤリするエピソードの連続なのだ。
(協力:学習院女子大学 藤原朝子)