昭和40年男PRESENTS あのころ僕らは

2015年8月28日

クレイマー、クレイマー

“映画は時代を映す鏡”と言われるが、79年度のアカデミー賞5部門(作品、監督、脚色、主演男優、助演女優)を制したこの米国映画は、当時の世相をもっとも如実に反映した作品といえるだろう。

公開された当時、米国では離婚率が上昇し、子供の養育権をめぐる裁判が急増していた。その背景には女性の社会進出がある。経口避妊薬の認可やウーマンリブ運動にも後押しされ、女性の労働力率は6割近くまで上昇。女性の経済的自立は「女は家庭、男は仕事」という価値観の崩壊をもたらし、結婚したカップルの2組に1組が離婚する時代を迎えていた。本作はそんな米国社会の現実を鋭くえぐり出し、時代を象徴する映画として大きな反響を呼んだのである。

その頃、日本の離婚率は米国の4分の1程度であったが、女性の社会進出は米国並みに進みつつあった。78年に「翔んでる女」や「結婚しない女」、79年に「キャリアウーマン」が流行語となり、山口百恵や桃井かおりなど、男に媚びないイメージの女性タレントが同性からの支持を集めたのは、そうした社会情勢の現れといえる。世界的にも75年の国際婦人年以来、自立した女性の活躍が目立ち始め、この年5月には「鉄の女」と呼ばれたマーガレット・サッチャーが英国初の女性首相に就任。映画の世界ではサリー・フィールドが男性社会に立ち向かう女性を演じた『ノーマ・レイ』でアカデミー主演女優賞を獲得している。

“女性の自立”と“家族のあり方”を問いかけた本作は、米国だけでなく日本でも大ヒット。翌80年の洋画4位の動員を記録し、キネマ旬報では外国映画部門1位の評価を獲得している。当時14歳だった昭和40年男は『3年B組金八先生』(TBS系)や『機動戦士ガンダム』(テレビ朝日系)に夢中で、シビアな離婚劇は遠い世界のことのようにも思えたが、あれから36年。今なら自分の人生も重ね合わせつつ、きっと新たな感慨が沸いてくるはずだ。

なお本作のテレビ初放映は85年4月の『水曜ロードショー』(日本テレビ系)。近年では2010年の“午前10時の映画祭”でも上映されるなど、ヒューマンドラマの傑作として、今なお多くの観客を魅了し続けている。


7歳の息子(ジャスティン・ヘンリー)と徐々に絆を深めていく父親(ダスティン・ホフマン)の奮闘ぶりも見どころだった

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 「文:濱口英樹/構成:『昭和40年男』編集部」

クレイマー、クレイマー

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昭和40年男

昭和40年(~41年3月)生まれの男性のための情報誌。同世代の活躍を紹介したり、年齢的にそろそろ気になってくる健康面をサポートする記事の他、幼少から青春時代にかけての思い出を掘り下げて世代的ルーツ探る記事を多数掲載。「ノスタルジックな想い出が呼ぶ共感」を「明日を生きる活力」に変えることを命題に誌面づくりに取り組んでいる。
毎奇数月の11日発売・700円 http://www.s40otoko.com/