昭和40年男PRESENTS あのころ僕らは

2015年8月7日

博士の異常な愛情

本作が日本で公開されたのは1964年10月6日。東京五輪の開幕4日前で、日本中がアジア初のオリンピックに向けて沸きかえっていた頃である。

60年に発足した池田勇人内閣が掲げる「所得倍増計画」のもと、高度経済成長をひた走る日本はGNP(国民総生産)で自由経済圏5位に躍進。国力の向上による為替の自由化に伴い、海外旅行も4月に自由化されており、五輪開催を機に国際化の波が押し寄せていた。同じ頃、トヨタが月産1万台を初めて達成し、国内ではマイカーブームが到来。自動車、ファッション、セックスを3本柱とする『平凡パンチ』が創刊され、そこからアイビーファッションが流行するなど、戦後20年を前に国民生活は豊かさを増しつつあった。

だが世界に目を転じると、米国はベトナム戦争への本格的な介入を開始。東京で平和の祭典が開催されている間にも、ソ連のフルシチョフ首相が電撃的に解任され、その翌日には中国が原爆実験の成功を発表し、5番目の核保有国となっている。この年、本作以外にも『五月の七日間』や『未知への飛行』など、米ソの核戦争をテーマにした映画が相次いで公開されたのは、そんな国際情勢を反映していたと言えるだろう。

ちなみに本作のフルタイトルは『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』。鬼才、スタンリー・キューブリックが手がけた初のSF作品であり、シリアスな題材を一級のブラックコメディに仕上げた手腕により、映像作家として世界的な評価を確立した。すでに公開から半世紀以上が経過しているが、現代でも十分通じる普遍性を備えた、痛烈な風刺劇である。

テレビで初放映された71年8月の『日曜洋画劇場』(NET系)では、ピーター・セラーズが演じたマンドレイク大佐の声を愛川欽也が担当。当時、幼稚園児だった昭和40年男は『帰ってきたウルトラマン』(TBS系)や『仮面ライダー』(NET系)に夢中で、リアルタイムで視聴した者は少ないかもしれないが、今観るとキューブリック監督ならではの世界観と卓越した映像センスにあらためて魅了されるに違いない。

科学者(写真)、米国大統領、英国人将校の3役を1人で演じたピーター・セラーズはアカデミー主演男優賞にノミネートされた
科学者(写真)、米国大統領、英国人将校の3役を1人で演じたピーター・セラーズはアカデミー主演男優賞にノミネートされた

©1957, RENEWED 1985,1995 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC. ALL RIGHTS RESERVED. 「文:濱口英樹/構成:『昭和40年男』編集部」

吹替洋画劇場 コロンビア映画90周年記念

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昭和40年男

昭和40年(~41年3月)生まれの男性のための情報誌。同世代の活躍を紹介したり、年齢的にそろそろ気になってくる健康面をサポートする記事の他、幼少から青春時代にかけての思い出を掘り下げて世代的ルーツ探る記事を多数掲載。「ノスタルジックな想い出が呼ぶ共感」を「明日を生きる活力」に変えることを命題に誌面づくりに取り組んでいる。
毎奇数月の11日発売・700円 http://www.s40otoko.com/