昭和40年男PRESENTS あのころ僕らは

2015年6月19日

戦場にかける橋

1957年に公開された本作は、戦争の愚かさを訴えた傑作として映画史にその名を刻んでいるが、当然のことながら、リアルタイムで鑑賞した昭和40年男はいない。なにせ生まれる8年前だ。東京タワーが翌年に開業するという時代。日本が戦後の復興を果たし、高度経済成長を謳歌し始めた頃の作品である。

当時は白黒テレビ・冷蔵庫・洗濯機が“三種の神器”として喧伝されていたが、NHKのテレビ契約数は42万台に過ぎず、娯楽の中心は何と言っても映画だった。ちなみに57年の映画入場者数は初めて年間10億人を突破。邦画では前年デビューの石原裕次郎が『嵐を呼ぶ男』などでヒットを連発していたが、洋画で最大の動員を記録したのが本作であった。

ロカビリーやサイクリングのブームが到来するなど、レジャーを楽しむ経済的余裕が生まれていたとはいえ、敗戦からわずか12年。我々の親世代にあたる日本人の脳裏には戦争の記憶が色濃く刻まれていた。同じ年にはソ連が大陸間弾道ミサイルの実験に成功。英国が米ソに次ぐ水爆保有国になるなど、東西冷戦は緊張の度合いを高めていた。第2次世界大戦中、タイとビルマの国境付近に設営された日本軍の捕虜収容所を舞台に、人間の尊厳や戦争の不条理を描いた本作がヒットした背景には「あの戦争を忘れまい」という当時の世情もあったに違いない。


英国軍将校を演じたアレック・ギネス(左から2人目)は『スター・ウォーズ』シリーズのオビ=ワン・ケノービ役でもお馴染みの名優だ。

スケールの大きなヒューマンドラマとして、アカデミー賞7部門(作品、監督、主演男優、脚本、撮影、編集、音楽)を制した本作がテレビで初放映されたのは76年4月。巷は戦後最大の疑獄と言われるロッキード事件が2月に発覚し、「記憶にございません」が流行語となっていた。昭和40年男なら誰しも本作のテーマ曲でふざけた記憶があるだろうが、実は戦時下における敵同士の対立や交流を濃密に描写しており、のちの『戦場のメリークリスマス』(83年)や『太陽の帝国』(87年)に連なる作品ともいえる。近年でも『午前十時の映画祭』などで上映されているが、観るたびに新たな感動を味わえる歴史的名作なのだ。

©1957, RENEWED 1985,1995 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC. ALL RIGHTS RESERVED. 「文:濱口英樹/構成:『昭和40年男』編集部」

吹替洋画劇場 コロンビア映画90周年記念
『戦場にかける橋』デラックスエディション
【初回生産限定】

詳しくはこちら

昭和40年男

昭和40年(~41年3月)生まれの男性のための情報誌。同世代の活躍を紹介したり、年齢的にそろそろ気になってくる健康面をサポートする記事の他、幼少から青春時代にかけての思い出を掘り下げて世代的ルーツ探る記事を多数掲載。「ノスタルジックな想い出が呼ぶ共感」を「明日を生きる活力」に変えることを命題に誌面づくりに取り組んでいる。
毎奇数月の11日発売・700円 http://www.s40otoko.com/