ほのぼの制作日記

2015年7月24日

吹替文化の歴史

羽佐間道夫

こんにちは!TJです。
今回は、な、な、なんと! 大ベテラン 羽佐間さんとお話しすることができました~。
演技もさることながら、トークも非常に面白いのでぜひお話ししたいなと思っていたところ、今度の新作で出演をお願いしていたので、その時にお話しさせていただきました。

羽佐間道夫(はざま みちお)
声優、俳優、ナレーター。シリアスな役からコミカルな役まで幅広くこなす芸域に定評がある。声優・ナレーターのマネジメント会社ムーブマン代表取締役。

TJ:このブログを通して、吹替文化をもっと広げていきたいと思っているんです。 吹替文化の歴史について教えてもらえないでしょうか。

H:なるほど。じゃあ、洋画吹替が生まれた背景から話そうかな。

【洋画吹替誕生の背景】

当時はTV局が開局したてで、まだコンテンツが少なかったんだよね。
それで、各局が映画会社にコンテンツを貸してくれと頼みにいったんだけど、
映画会社からは「ライバルだから貸せないよ」と断れたんだ。
それで、慌てて外国からたくさんコンテンツを買ってきたんだよね。

字幕版で流すという案もあったけど、
テレビ放送は色んな人が見るから、読めない人もいるかもしれない。
だから吹替えることになったんだ。

問題は、誰が吹替えるかだよね。
今みたいに声優という職業の人はいなかったから、
最初は歌舞伎役者にお願いしようとなったらしいんだ。
でも、歌舞伎の話し方ってずいぶん癖があるでしょう?
アラン・ドロンがあんな話し方をしたらおかしいよという話になって、
われわれ劇団員のところに話がきたんだよ。

【倒錯の時代】

そうして放送された吹替洋画にみんな夢中になってね。
夢中になりすぎて、吹替の声を本物の俳優の声だと
錯覚してしまう人が大勢現れたんだよ。

『刑事コロンボ』も、ピーター・フォークじゃなくて小池朝雄さんの
「うちのカミさんがね」の方が本物だったんだ。

そういえばこんな話があるよ。
昔、青森に刑事コジャックの大ファンの代議士さんがいてね、
L.A.に出張に行ったときに、たまたまコジャック役のテリー・サバラスと
会ったそうなんだ。その時テリーに「おめぇ、ながなが日本語うまいんでねぇの」って
青森弁で話しかけたってね(笑)

もうひとつ『コンバット!』の話もあるよ。

声優の田中信夫とヴィック・モローを混同している人がいてね。
僕はそのとき彼の部下の二等兵役をやっていたんだけど、僕のところに
「お前の上司は戦うために体を鍛えなきゃだめなんだから、
フナを食わせろ。これを軍曹に渡してくれ。」と言って、
毎日のようにフナの佃煮を送ってくる人がいたんだよ(笑)

今じゃ考えられないよね!

【声優は本業ではなかった】

昔は声優という職業はなくて、舞台俳優がやっていたんだ。
劇団四季の日下武史や、藤岡琢也、愛川欣也とかみんなそうだね。
あとはラジオ俳優も吹替をやっていたな。
大平透、中村正、黒柳徹子、里見京子とか。

最初はみんな嫌がっていたよ。
人のしゃべっている絵に合わせるなんて
物まねみたいだと白い眼で見られた。

でも、劇団員では飯は食えなかったけど、
吹替の仕事でなんとか食えるようになってきたんだ。
それで、300人くらいの俳優が声優に転身したんだ。
副業のつもりが、いつの間にか本業になってた感じだね。

今は養成所はいっぱいあるけど、仕事の枠は限られているから
なかなか大変だよね。
僕が設立に携わった俳協(東京俳優生活協同組合)は、
3,000人くらい卒業生がいるけど、そのうち声優のプロに
なったのは3人だけ。

でも最近は、テレビに出たりCDを出したり、
声優という枠を超えてタレントになっている人もいて立派なもんだ。

【収録現場での思い出】

そういえば、昔は生放送だったからいろいろハプニングもあったよ。

ある番組で声優2人が生放送で吹替えることになったんだけど、
1人が本番直前にトイレに行きたくなってね。

急いで行って戻ってきたんだけど、
スタジオに鍵がかかっていて入れなくなっちゃったんだ。
昔のドアは、本番2分前になると自動で鍵がかかる仕組みだったんだよ。

それで、結局スタジオに残った1人が2役やってのけたんだ。
お姫様役と海賊役を(笑)

滝口順平さんなんて、全編全役を生放送で1人でやってたからね。
男役も女役も。すごいよね。
生放送というのは緊張感が全然違う。

実は、そういう文化を伝えていきたくて9年ほど前から
「声優口演(こうえん)」という無声映画をライブで
吹替えるイベントをやってるんだ。

声優口演 SPECIAL

人気声優で甦るサイレント・ムービー
あのサイレント映画に、人気声優がライブで声をアテる人気イベントを今年も開催!!
往年の名作の上映にあわせて、人気声優たちがライブで声をつける!
サイレント映画のはずなのに、登場人物たちがいきいきと喋り始める…
一人で何役もの声を使い分ける声優たちの至芸を、間近でご覧ください。昔の名作映画が現代に甦ります!!

2015年11月7日(土)-11月8日(日)
よみうりホール

企画・総合プロデュース:羽佐間道夫
上演台本:福田雄一 / 伊福部崇
演目:ロイドの巨人征服 / キートンの化物屋敷 / 声優トークショー 他
音楽:ポカスカジャン

詳細は公式ホームページをご覧ください。
http://www.seiyu-ko-en.com/

面白いよー!
収録じゃ味わえないライブ感がいいんだよ。
古いようで新しい試みだよね。
楽しいから今度見に来てよ!

TJ:去年の声優口演ライブ「したコメ meets チャップリン」を拝見させていただいたのですが声優さんの技術力が問われる生のライブに圧倒され、声優さんの能力がすごいものだと改めて感じました。吹替収録ももっと自由にやるべきかなと思ってしまうぐらいです。無声映画をこんなに面白く観れるのはなかなかないのではと思います。ぜひ皆さんも機会があればチェックしてみてください。

次回は安原義人さんと朴璐美さんの対談で~す。