YOU TALKIN’TO ME?

2015年8月7日

主人公の生き方と役を演じ切る責任に共感!
『トッツィー』

小関裕太【俳優】

音楽というのは不思議で、人の恋心というものをくすぐる。
切なさと哀しさと、その裏にある喜び、いろいろと呼び出してくれる。
“可愛い子”“お嬢さん”という意の『トッツィー』という映画作品で“トッツィー”にあたるMichael Dorsey(マイケル)。そしてマイケルに惑わされる男たち。女たち。さらに観てる我々にそれは通ずる。すべての恋心をくすぐる。

劇中耳に入ってくる音楽は撮影時には流れてない。つまり後付け。
でもしっかりと作品という肉体に血を通わせているところが素晴らしい。

僕はこの作品のポスターを見たとき絶対に朝か昼に観たい! という衝動に駆られたので、感覚に従って朝、見た。直感は当たっていて、劇中では陽の出ているシーンが多く、観てるこっち側の時間軸とマッチして心地よかった! そして大事なところで現れる夜のシーンがしっとりと味わい深く感じた。
 
アカデミー賞、英国アカデミー賞、ゴールデングローブ賞、他を受賞したことも納得がいく。なんといっても設定が面白い。
この物語の主役は売れない役者たち。「受かりたくても受からないオーディションを受け続け、こんな自分が報われるのか分からないけど、やり続ける自分を信じる」人。そんな人たちで溢れたニューヨークの厳しい芸能界が舞台になっている。
僕が今年の初めニューヨークへ行って感じたことは、夢を追いかけてニューヨークまでやって来た人は数えられないほどいるということ。「マンハッタン」というニューヨークの中でも小さな面積にその大勢が集まっている。僕もその一人だった。

このニューヨークで役者として生きようとする主人公マイケルは、ワガママすぎて芸能界から見放されようとしていた、そんなある時新しい役者人生を立て直そうと、女優として生きることを選択してみる。
この作品を未だ観たことがない皆様は、「え?そんな無茶苦茶な設定なの?」と言うけれど、無茶苦茶な設定を現実にしてしまったのがマイケルを演じるダスティン・ホフマンの演技力なのだ。説得力がありすぎる! だってあんなアメリカの女性実際いるんだもの! すごい!
この作品、まずは騙される。観てるこっちが騙される。そこが、ズルい。

マイケルが演じるドロシー・マイケルズという女優は隙のない気の強い女性。この芸能界で(特に日本で)あんなに強気に立ち向かって行こうと思っても気が臆してしまうけど、あの魅力付きの気の強さは男が割り切っているからこそ出せるものだと思う。そこにまた説得力があって「やられた」って思う。

実は僕、小関裕太は昨年末に宮藤官九郎さん脚本の『ごめんね青春!』というドラマに、性同一性障害の悩みを持つ村井くんを演じた。
マイケルは決して性別の悩みを抱えていたわけではないけれど、演じきる責任に対して通ずるものを感じた。
それもまた僕がこの作品を好きになった理由なのかもしれない。

この作品を観て心に残るものは大きくふたつ。

一つはありきたりだけれど、「みんな生きている」ということ。
それぞれ正解なんてわからないまま信じることを大切に、生きていることを実感する。

二つめは「みんな傷つく」
傷つくことは唯一その傷ついた人たちにしか持てない共感をつくり、時が過ぎるとその辛い現実物語が後味に残る。
悲しいことがあってもその後味はストーリーになるんだよと最後に教えてくれる素敵な作品 。

観れば、どうしようもないことが起きてもその出来事があったから良かったんだと思える。

何事も後始末は大変だけれども。

■告知

8月8日より主演作「Drawing Days」(原桂之介監督/アミューズ、ライブ・ビューイング・ジャパン配給)がシネクイントにて上映中。また、TVドラマ『ホテルコンシェルジュ』(TBS・毎週火曜日22:00~)にベルボーイ役で出演中。

吹替洋画劇場 コロンビア映画90周年記念

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